勝負の世界で“たら、れば”は禁物ですが、自分の思い入れのある馬にはどうしてもバイアスがかかってしまいます。
東京9R・雲雀Sに出走するオメガウインクは3勝クラスに昇級してから④②着。字ヅラでは卒業を目前に堅実に走っているように見えますが、大和田師が「どちらともまずまずの不利がありました」と振り返るように、“スムーズだったら勝っていたのでは”というレース内容でした。
前々走の白秋Sでは勝ち馬ソンシに勝負どころからフタをされて直線半ばまで窮屈な競馬を余儀なくされてのもの。前走の奥多摩Sに至っては、直線で後続馬が狭いスペースを狙って入ってきたところでぶつけられて、体がよじれるほどバランスを崩していました。それでいての④②着はクラス上位の力を示すものです。
巻き返しを狙って、中間は短期放牧を挟んで調整。帰厩後も順調にメニューをこなしています。
1週前にウッドで5F67秒2―38秒7、1F11秒6としっかりやったので、今週は坂路追いでしたが、大きく先行する相手に軽く仕掛けただけで併入に持ち込む反応の良さを見せてくれました。
「いい状態で送り出せそうです。熱烈なファンがいるので、その方のためにもそろそろ何とかしたいです」と大和田師はいつも以上に力が入っていました。
聞き進めていくといろいろな応援グッズも送られてきているそうです。
それをタダで済まさないのが美浦でファンサービストップクラスを誇る大和田流。
「贈られた品々を身に着けていくつもりです」
自分も一ファンだった頃に同じようにパドックでプレゼントを身にまとってくれていたら、感涙ものに違いありません。
ファンの応援グッズによる後押しと、リベンジを期しているであろう戸崎騎手の気迫のこもる手綱さばきで、今度こそ先頭でゴールを駆け抜けるとみました。
「ベガはベガでもホクトベガ!」
93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。