ヴェラアズールはエイシンフラッシュ産駒の概念を覆す馬だ。
最大の特徴はその決め手。瞬発力不足に思える産駒が多い中で異質な存在といっていい。
5戦連続して上がり最速の白抜き数字。芝転向後の成績欄が如実に示している。特に勝った3鞍は34秒8、33秒9、33秒2。クラスを上げるごとに破壊力が増してきた。
5走前の淡路特別は稍重馬場で簡単に馬群を割り、2走前のジューンSは残り1Fで勝負を決めた。そして前走の京都大賞典は直線を向いた時点で後方5頭目の10番手。そこから大外一気に突き抜けた。別定GⅡでの2馬身半は決定的な脚力差で圧巻。追われるだけ伸びるフォームには、上がり32秒7の脚で10年のダービーを制した父の姿がフラッシュバックする。父譲りの剛脚を使える馬へと成長してきた。
これは芽が出るまで待ち、大切に成長させた渡辺師、厩舎、そして牧場の手腕によるもの。「デビュー前から骨折や骨瘤と体質の弱さが。長く使うためにダートからでしたが、今年に入って馬がパンプアップして、つくべきところに筋肉がついてきた。いいですね」とはトレーナーだ。
実際に今は軽々と調教時計が出る。1週前のCウッドで6F79秒9―36秒6、1F11秒4。今週もよくストライドが伸びた走りで11秒3だ。ここ2週でラストの自己最速を更新し続けたから、もう一段階切れるか。JCの大舞台で産駒最高の大樹となっていい。
1974年、愛知県で生を受ける。名前の通りのザ・長男。
大阪での学生時代、暇な週末は競馬場に通い、アルバイトをきっかけに日刊ゲンダイへ。栗東トレセンデビューは忘れもしない99年3月24日。毎日杯の週で、初めて取材した馬は連勝中だったテイエムオペラオー。以降、同馬に魅せられ、1勝の難しさ、負けに不思議の負けなしと、学ばせてもらったことは実に多い。
グリーンチャンネルでパドック解説をさせていただいているが、パドック党であり、大の馬体好き。返し馬をワンセットで見たい派。現場、TV観戦でもパドックが見られなかったレースの馬券は買わないと決めている。
余談だが、HTB「水曜どうでしょう」の大ファン。こんこんと湧き出る清水のように名言を連発する大泉洋氏を尊敬してやまない。もちろん、“藩士”ゆえにDVD全30巻を所持。