前2年が補欠1番手で除外に──。念願のフェブラリーSで勝ち馬に迫った④着タガノビューティーの舞台裏

公開日:2024年2月20日 17:00 更新日:2024年2月20日 17:00

初のフェブラリーSは攻めた調教で馬運車、当日の運動にも配慮

 2024年、最初のGⅠフェブラリーSが終わった。

 集まった観客は4万8432人。熱戦のゴール前を大歓声が包んだ。

 大井から参戦したミックファイアの担当者は、自身のSNSで「本馬場入場時、ミックファイアを紹介された時の地鳴りのような大声援は鳥肌が立ちました。応援してくださった皆様ありがとうございました」と感動、感謝の意を伝えていた。

 JRA勢にも、4年越しの念願かなって府中ダートの大舞台に立った馬がいた。

 7歳タガノビューティーだ。直線は勝ち馬ペプチドナイルを追うように伸びて、いったんは2番手。結果こそ④着となったが、栄光を掴むかの走り。十二分に存在感を示した。

 同馬はご存知のとおり、前3年のフェブラリーSで除外。4歳時はオープン入り直後。明らかな賞金不足で、前2年は補欠の一番手──。

 2年前はオアシスS、欅Sで賞金を上積みしたものの及ばず。昨年はフェブラリーSで初となる海外馬のカナダ・シャールズスパイトが参戦。国際競走となった17年間で唯一、外国馬枠が出た年の17番目。届きそうで届かない舞台でもあった。

 今年はコーラルS勝ちに、かしわ記念、武蔵野Sで連対して賞金を上積み。満を持しての出走。とはいえ、前哨戦の根岸Sは⑬着だから、大いなる巻き返しでもあった。

 その舞台裏が気になり、火曜朝、担当の桜井助手を訪ねてみた。

「根岸Sの後、獣医さんは〝走っていないね〟と話していたんですよ。根岸SからフェブラリーSは中2週と間隔が詰まる。ビューティーはテンション面で大変な馬ですが、先生と相談して〝次はないくらいの気持ちでしっかり攻めよう〟と。あえて1週前をコースで併せたことで、いい意味でうるさい気合乗りにつながりました」

 同時に、よりレースへ向かう過程にも細心の注意を払ったとも教えてくれた。馬の精神面が安定、リラックスした状態に早く戻るという青色灯つきの馬運車で輸送できるように手配もした。

「他の馬を見て高ぶるので、レース当日の朝も近隣馬房の関西勢にお願いして、早朝に一頭で運動できるようにさせてもらいました。皆さんに助けて頂いたお陰です」

「無冠で終わらせる訳にはいかない」(桜井助手)

 当日のパドックに、明け7歳とは思えない気合、迫力十分の姿で登場し、レースでも鋭い差し込み。陰の努力は実を結びかけた。

「先生は〝もう1歳若かったら(苦笑い)〟なんて話していましたが、初フェブラリーSでも、やるべきことはやれたので悔いはないですね。自分としても初の東京GⅠでしたが、やはりいいなと思いました。楽しめました」

 桜井さんは、晴々とした表情で振り返る。

「まだ、勝ってはいませんが、重賞レベルにある馬。無冠で終わらせる訳にはいかないですからね」

 次戦は5月のかしわ記念か、それとも他か。初重賞Vも待ちつつも、先の話だが、8歳でのフェブラリーS出走にも期待をしたくなる。2歳夏のデビューから明け7歳までの34戦。無事是名馬を地で行く同馬なら可能だからだ。

「今回も思いました。ビューティーが最も輝けるのはやはり直線の長い東京ですね」

 2年連続の東京GⅠ出走へ。1年後には走るたびに多くなるファンの後押し、声援もより一層増えているはずだ。

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