先週の日曜2重賞は血統予想的には〝ほぼ〟思惑通りの決着だった。土曜発行のコラムに書いたようにディープインパクト系がともに活躍するレース。結果その通りになったからだ。
まず、京都で行われた京都大賞典はディープインパクト産駒のディープモンスターが7歳にして重賞初制覇を決めた。これで同レースは23年プラダリア、24年シュヴァリエローズに続き、ディープ産駒が3連勝中だ。ちなみに22年は阪神での開催だったから京都に舞台を戻してからは勝ち続けているということになる。さすがに産駒も少なってきているため(現5歳世代が最後)、来年もディープ直子が勝てるかは分からないが、ディープ系の馬に注目したいレースなのは間違いない。
②着はレイデオロ産駒のサンライズアース。母系はシュヴァルグランらを出したバラードの牝系で成長力のある血。古馬になりグングン力をつけてきている印象だ。ただ、父はステイヤータイプで、前2走の三千、三千二百からの距離短縮。キングカメハメハ系は距離短縮より距離延長で成績を上げることも多く、その分もあったか。
同じレイデオロ産駒では1番人気のアドマイヤテラが④着だったが、アースは兄がダート重賞で3勝を挙げるセラフィックコールで馬力のある母系。一方、テラは母系がディープインパクト同じ牝系で、母が決め手あるアドマイヤミヤビと瞬発力型。稍重で力のいる馬場がアース向きだった印象だ。
③着ヴェルミセルはゴールドシップ産駒で、こちらも馬力のあるタイプ。稍重の馬場が味方した。ここまで二千五百~二千六百で4勝の長距離型。ゴールドシップ産駒らしい非根幹距離型のイメージもあっただけに、根幹距離の二千四百でのこの内容は評価していい。ちなみに非根幹距離と言えば、同産駒は京都の二千二百と非常に相性が良く通算で勝率・207。もしエリザベス女王杯に出走できればひょっとして……。
今回の冒頭で〝ほぼ〟思惑通りの結果だったとしたのは毎日王冠の結果を受けてだ。
こちらはコラムに書いたように、ディープ系でも特にストームキャットの血を持つ馬が強い傾向にある。昨年もディープ×ストームキャットのキズナ産駒のシックスペンスが制しており、今年も同産駒のサトノシャイニングを本命に推したが結果は③着。母はアルゼンチンのマイルGⅠ勝ち馬、スタート直後に行きたがっていたことを考えても、今はもう少し距離が短い方がいいのかもしれない。
勝ったレーヴェンスティールもディープ直子のリアルスティール産駒。しかも、リアルスティールの母の父はストームキャットだ。リアルスティールも毎日王冠を17年に制しており、父子制覇となっただけにゴール前では思わず「そっちか~」と声が出てしまった(印は▲)。予想の詰めの甘さが記者らしいといえばらしいのだが……。
ただ、ディープとストームキャットの血を持つ馬が①③着だったのがこのレースとの相性の良さの証し。レーベンスティールは昨年、同舞台のエプソムCも制しているから。よほど適性が高いのだろう。ちなみに、リアルスティール産駒も非根幹距離向きのタイプが多いことは覚えておきたい。
昨年に続いてホウオウビスケッツが②着。こちらは祖母の父がディープインパクトで、父がデピュティミニスター系のマインドユアビスケッツ。米国スピード型とディープの血を持つという点では①③着馬と共通している。今回も父譲りの先行力を発揮しての粘り込み。昨秋は毎日王冠、天皇賞・秋で逃げて②③着。自分の形に持ち込めればしぶといタイプだ。
凱旋門賞は直前の降雨もありバリバリの欧州凱旋門血統が上位
日曜の夜に行われた凱旋門賞は残念ならが日本馬の勝利とは今年もならなかった。クロワデュノールは⑭着。外枠から前に行くために脚を使ったこともあるのだろうが、直線では完全に失速。日本馬で⑤着と最先着だったビザンチンドリームは三千㍍超のレースでも好走例があり、3頭の中では一番スタミナに優れたタイプだった。レース直前に雨が降ったことでよりスタミナ勝負+タフな馬場に強い欧州型向きの馬場になったことは間違いないだろう。
実際、勝ったのはダリズでシーザスターズ産駒。シーザスターズは09年の凱旋門賞馬で、その母アバンシーも凱旋門賞馬、半兄にガリレオがいる超がつく欧州血統。日本では5勝を挙げたエンジニアやウオッカの仔で4勝のタニノアーバンシーがいる程度で、ほとんど結果が出ていない。それがこうも鮮やかに勝つのだらやはり根本的な馬場適性が違うのだろう。ちなみに③着ソジーや、昨年②着のアヴァンチュールもシーザスターズ産駒だ。
②着ミニーホークはフランケル産駒で、母マルチリンガルの半兄にはキングマンがいる。父はいわずとしれたサドラーズウェルズ系で同系は21年から4年連続で凱旋門賞を勝利中。とくにフランケルの血を引く馬は2勝を挙げている。サドラーズウェルズ系も日本では〝重い〟と言われて欧州ほどの成績を残せていない。
その点、今回の日本馬3頭はすべて瞬発力勝負に強いサンデーの血が入っている。日本の競走馬は東京の高速馬場で決め手が求められるダービーを目標にして作られるケースが多い。いい悪いの話ではなく、欧州の馬とそもそもの配合コンセプトが違うので、この結果も仕方のない面はある。逆に東京で行われるジャパンCで欧州馬が近年は結果を出せないことも同様だ。同じパリロンシャンの馬場でも良馬場に近い状態なら日本馬でも違う結果が出るのかもしれないが、タフな馬場になると厳しい面があるのは事実だろう。
そういった意味で個人的に今の日本の種牡馬で凱旋門賞に挑戦してほしいと思っているのがレイデオロ。産駒はスタミナ寄りでなによりレイデオロ自身がサンデーの血を持っていないからだ。母系もサンデーの血を持たない馬(できれば欧州系)となると日本で結果を出すのがなかなか難しいのだが、そういった馬にこそ可能性を感じる。