高速東京芝のNHKマイルCで再認識したデピュティミニスター系の好相性とモーリス産駒の不相性
公開日:2025年5月12日 17:00 更新日:2025年5月12日 17:00
先週は稍重だった土曜のエプソムCが千八1分43秒9のレコード決着。想像以上に時計が早いのが今の東京の芝コースだ。
良馬場になったNHKマイルCでどんな時計が出るかと思っていたが、勝ち時計の1分31秒7は前10年では21年シュネルマイスターの1分31秒6に次ぐ好タイム。加えて前半の3F通過33秒4はダノンシャンティが勝った10年と並んでNHKマイルCで過去最速。千㍍通過56秒4も10年の56秒3についで歴代2位だの速さだった。
勝ったパンジャタワーの父はタワーオブロンドン。昨年の新種牡馬でもちろんGⅠは初勝利。産駒の重賞初制覇もパンジャタワーの京王杯2歳Sだった。
父は現役時代、スプリンターズSを制覇。6、7Fの芝でレコード勝ちもあるように、ゴーンウェストの血を引く快速型だ。産駒もその影響が強く、ここまで芝、ダート通算13勝を挙げているが8勝が6F以下。ちなみにマイル以上の距離となると福島の千七ダートで1勝のみ。そもそも今回も勝利が産駒のマイル戦の初勝利だったぐらいだ。パンジャは母クラークスデールがマキャヴェリアンの3×3のクロスを持っており、ミスプロ色の強い配合。高速馬場がハマったのだろう。今回は勝ったものの本質的には短距離型の配合で、ゆくゆくは短いところへシフトしていくのではないだろうか。
②着マジックサンズはここまで千八、二千を使ってきて今回が初のマイル戦。ただ、父がストームキャットを持つキズナ。祖母アンブロワーズは6F重賞、函館2歳Sの勝ち馬。母コナブリュワーズも6F~7Fで4勝と母系は短距離寄りの血。加えて祖母の父がフレンチデピュティでこのレースと相性のいいデピュティミニスター系。このあたりも好走できた要因ではないか。
③着はロードカナロア産駒のチェルビアット。母キューティーゴールドはステイゴールドの半妹で、チェルビアットの半姉がジャパンC勝ち馬のショウナンパンドラだが、妹は母の父がフレンチデピュティで、この馬もデピュティミニスター持ち。父にストームキャットの血が入ったスピード寄りの配合で、姉よりも短いところ向きの配合になっている。スプリント戦にも対応できそうな馬が上位を占めたことが、今の東京の芝がいかに速い脚を求められるかを示しているのではないか。
④着モンドデラモーレも母の父クロフネでデピュティミニスター内包馬。同系はこのレースで真っ先に狙わなくてはいけない血だということを再認識させられた。
逆にこの馬場、このペースで弱点を露呈したのが1番人気で⑭着だったアドマイヤズーム。モーリス産駒は晩成傾向があり、若駒のうちは折り合い面で難しさを見せることがあるのだが、ズームもスタート直後から行きたがり、向正面で他馬と接触したことで完全にスイッチが入ってしまった。さらに道中では落鉄もあったとか。このペースをかかり気味に先行してはラストで失速もやむなし。今回は力を出し切っていないと判断していい。
ただ、今回同じモーリス産駒のアルテヴェローチェも⑬着と惨敗。もともとモーリス産駒は東京を得意とする馬が多いのだが、NHKマイルCに限ればこれまで8頭が出走して全て2ケタ着順とまったく結果が出てない。この時期の高速馬場で行われる東京マイルのGⅠ自体が産駒に不向きなのかもしれない。
土曜のエプソムSは前記の通りレコード決着。勝ったセイウンハーデスはシルバーステート産駒だった。エプソムCは今年から1カ月前倒しに。いつもは梅雨時期に行われることも多く、パワー寄りの種牡馬の活躍する傾向にあるのだが、今回は稍重でも時計の出る馬場。シルバーステートとディープインパクトの血を引く馬が勝ったのはその辺も影響したとみる。③着トーセンリョウもディープ産駒だから、この時季に移ったエプソムSではディープ系狙いで正解が出そう。
ちなみに、セイウンの母の父はマンハッタンカフェ。母の父としての優秀さをあらためて証明した形だ。
京都で行われた京都新聞杯はショウヘイが②着に2馬身半差の快勝。ショウヘイはデビュー当時から注目していた良血馬で、伯母が2冠牝馬のミッキークイーン、近親にエリザベス女王杯勝ちのブレイディヴェーグがいる血筋。サドラーズウェルズ×ヌレイエフの相似クロスがあり、二千二百への距離延長も良かったのだろう。意外と東京巧者の多いサートゥルナーリア産駒でもあり、ダービーでもマークはしておきたい。