「無事に帰ってきてくれる。これだけでいい」 愛馬ソダシと最後のGⅠ挑戦となる今浪厩務員

公開日:2023年5月29日 14:00 更新日:2023年5月30日 13:17

「明らかに質が違う印象」(川田)

 名コンビで挑む最後のGⅠとなる。

 白毛馬ソダシをデビュー以来、手がけてきた今浪隆利厩務員だ。〝荒ぶる〟ゴールドシップの担当として著名となり、ツイッターではフォロワーが5万5千を超す有名なベテラン。9月に65歳となり定年を迎えるため、「秋は中途半端になるからね。仕事は6月いっぱい」(同厩務員)と夏競馬を待たずに競馬サークルを後にする。

 コンビとしての4年超。最後の16戦目が、今週末のマイルGⅠ安田記念だ。

 5歳初戦となったヴィクトリアマイルは時計差なしの②着。2番手から早め押し切りを狙ったが、最後の最後でソングラインに頭差だけ差された。管理する須貝師は「ソダシの競馬をして、よく頑張ってくれたね。使ったダメージはなく、順調にきてるよ。前走は〝たたき〟という意味もあったからね」と順調さをこう話す。

 今回は鞍上が川田ともなる。実は、白毛馬とは縁がある。同騎手は07年4月1日の阪神1Rで白毛馬ホワイトベッセルを勝利に導き、JRAで初めて白毛馬を勝たせたジョッキーなのだ。ソダシとの初コンタクトは1週前のCウッド。6F82秒3、3F36秒5─11秒4で2歳王者ドルチェモアと併入した。

「今までたくさんの白毛に乗せてもらいましたが、明らかに質が違う印象。1週前追い切りを無事に終えられました。このまま、来週も無事に終えられれば」と感触を話した。

「無事が一番。それで自分の役目を終えられるよね」(今浪厩務員)

 勝てば、2歳暮れの阪神ジュベナイルF、3歳春・桜花賞、4歳のヴィクトリアMに続く、4年連続のGⅠ制覇の記録にもなる。

 最後のコンビとなる今浪厩務員に心境を問うとこう返ってきた。

「これだけの馬をやらせてもらい、まず無事に競馬に出す。無事で帰ってきてくれる。これでいいんだよ。ファンがソダシの姿を見たいと思ってくれ、喜んでくれる。ファンも多いし、応援も凄い。無様な競馬はできないな、というプレッシャーは常にあったかな。ホント、手が抜けなかった(苦笑)」

 また、白毛ならではの苦労話も聞かせてくれた。

「一番、大変だったのはやっぱり手入れ。この毛色だし、目立ってしまうからね。皆、カメラを持って構えてるから(苦笑)。朝、馬房から出て、汚れている箇所だけ洗って運動に出たりした」

 毎回、驚くほどに白い馬体を保っていたはずだ。SNSも使いこなす今浪厩務員らしい話だ。この〝インスタ映え〟の意識が写真、映像映りをよくし、ファンも増えていったのだ。そして、最後に穏やかな表情でこう話してくれた。

「ゴルシ(ゴールドシップ)もそうだけど、常に思っているところに使え、無事でいてくれた。難しいことが多いのが競走馬だから、これは凄いこと。特にソダシは牝馬だったからね。だから、今回もいい成績を、というよりも無事が一番。それで自分の最後の役目を終えられるよね」

    ◇    ◇    ◇

 人が馬をつくる。トレセン入厩時のソダシは周りの音に非常に敏感だった。それを落ち着け、「大丈夫だよ」と声をかけ、運動する。キャリアも重ねたこともあるが、今では〝白の女王〟としてすっかりと堂々とした立ち振る舞いになった。寄り添ってきた成果がそこにある。レース当日は愛情のこもった洗い上げで真っ白な馬体で登場するだろう。その仕上げ、走りに注目したい。

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