トレセン記者 記憶の名馬たち

【記憶の名馬たち】重賞未勝利馬ダイワディライトがディープを抜いた記録とは?

公開日:2019年9月12日 17:00 更新日:2019年9月12日 17:00

 東西トレセンを駆け回るゲンダイの現場記者たちはそれぞれ担当厩舎を抱えている。長年、取材を続ける中、記録だけでなく記憶に残る名馬との出会いも。厩舎関係者とともに、その懐かしい足跡をたどってみる。第12回は美浦・新居記者の忘れられないあの馬――。

 近年の最強馬といえばディープインパクト。数々の歴史を塗り替えてきた名馬ですが、そのディープの記録を抜いたのがダイワディライトです。
“デビュー戦からの連続1番人気での出走”

 これがその記録。7冠馬ディープは04年12月の新馬戦から06年12月の有馬記念まで、国内のレースを13戦連続、そして全て1番人気で引退まで出走しました。

 一方、ダイワディライトは06年11月の新馬戦から10年1月のジャニュアリーSまで、ダート短距離戦で14戦連続1番人気を記録。1年4カ月の長期休養を挟みながら、足かけ3年ちょっと。しかも、その間は〈7502〉の好成績でした。

「狙ってできる記録じゃないし、なかなか難しいよね。しかも、負けているのに1番人気なんだから凄かったよ」と振り返るのは高平助手。

 父がアフリート、母は桜花賞②着馬ロンドンブリッジ。半姉ダイワエルシエーロはGⅠ馬という良血ではありましたが、馬自身の歩様がビックリするくらい硬かったのを覚えています。

「幼少の頃のケガの影響があったみたい。戦車みたいな馬で、普段から歩様が悪く、他厩舎の人がよく“大丈夫?”と心配してくるほど。それでも、レースに行くと重心の低い走りに変わって問題なかったんだけど」

 競走馬としてピークを迎えたのは09年。8月の新潟・NST賞で初のオープン特別勝ち。13戦連続1番人気で臨んだ12月のGⅢカペラSでは直線で先頭に立ったものの、内からすくわれて首差②着。初の重賞挑戦でこの好内容なら重賞タイトルは時間の問題と思われたところでのことでした。

「レース後、久しぶりに放牧に出たんだよね。そしたら諸事情により、翌日に帰厩してきたんだ。それまで、2度も厩舎で新年を迎えたように、長期で美浦にいたでしょ。以降、気が抜けたように馬がボケちゃって」

 くしくもディープを抜いた翌14戦目の10年1月ジャニュアリーS。これまでとは違い、テンからハミを全く取らずに進んで行かないまま⑧着に沈んだ。次戦のGⅢ根岸Sは9番人気で記録がストップし、結果も⑫着とさらに着順を落とした。

 それからは再び、輝きを取り戻すことも、1番人気に支持されることもないまま引退に。

「重賞を勝たせたかった。勝てる力はある馬だった」と高平さん。ちょっとしたことで歯車がズレてしまう競馬の難しさを痛感したという。

 ちなみに、デビューからの連続1番人気の記録は10年11月にブエナビスタ(国内のみ)が更新。そして記録は19戦連続まで伸ばした。ダイワディライトの記録保持はわずか10カ月間だったということも付け加えておきます。 (美浦・新居哲)

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