データ室・武田記者のラップと馬場差を徹底分析する

レコード決着の2重賞から見えてくること

公開日:2019年9月10日 17:00 更新日:2019年9月10日 17:00

 先週の2重賞はあらためて競馬の難しさを教えられたレースだった。

 中山、阪神ともに開幕週。どちらも皐月賞デー以来、5カ月近く間があいている。

 となると、予想されるのは芝の高速決着だ。両レースともに道中は超のつくハイペース。しかし、阪神のセントウルSは差しが決まり、中山の京成杯オータムHは逃げ圧倒。結果は真逆である。

 まずはセントウルS(写真)。予想通り、◎マテラスカイが逃げたものの、ラブカンプーにかなり絡まれ、2F目から3F続けて10秒台のラップを刻むハメになった。前半の半マイル通過は43秒8。芝千二の4F最速は07年バーデンバーデンCの42秒9で、43秒台のレースは過去にいっぱいある。

 ただし、猛烈なラップが刻まれるのは2コーナー奥からスタートする小倉や福島などが大半で、スタートから3コーナーが近い阪神ではこれが史上最速。逃げて失速は当然の流れだった。

 そんな中、前半3Fを33秒5で通過して、上がりを33秒2でまとめたのが勝ったタワーオブロンドン。スプリント戦の3馬身差はとてつもなく大きな差で、1分6秒7という時計がこの馬の本質なのか。

 春には京王杯スプリングCで千四1分19秒4。これに次いで2度目のレコード勝ちである。

 対して、稍重だった前2戦は③②着。洋芝というのがあったにしても、時計がかかれば分が悪いのかも。本番スプリンターズSで買えるかどうかは、馬場状態が大きなカギとなろう。

 3歳馬ファンタジストは積極的に出していく内容で大きく前進の②着。3馬身も離されたとはいえ、今回の走りは中身が濃い。

 一方、ミスターメロディは4番手からさっぱりの⑧着。本番に向けて気になる材料だ。右回りがイマイチなのか、それとも高速馬場がダメなのか。高松宮記念を1分7秒3で勝った馬が、今回はそれより0秒4遅いタイムだから、やはり右回りではパフォーマンスが落ちると考えるべきなのだろう。

 中山の京成杯AHを逃げ切ったのは◎トロワゼトワル。道中、「さすがに速過ぎるのでは」と思ったが、「馬と会話ができていた」という大ベテラン・横山典には大きなお世話だったか。

 驚きなのは千六1分30秒3というタイムだけでなく、1400通過が1分18秒3ということ。千四のJRAレコードは京都で15年の安土城Sで記録された1分19秒0(勝ち馬ウリウリ)である。

 以前のレコードは同じ京成杯AHでレオアクティブの1分30秒7。この時の1400通過は1分18秒9だから、それを大きく上回る。

 今回、マイルで勝利したが、実はトロワゼトワルのベストは千四ではないか。父はロードカナロア。同日、阪神に瀬戸内海特別でメモリーコロネットが1分19秒3のレコードV。こちらも父は同じである。

武田昌已

武田昌已

月~金は麻雀、土日はウインズだった学生生活を経て、入社後は編集一筋25年超。2015年春は何と9週連続重賞的中の快記録も達成し、2016年は春東京でGⅠ4連勝も。馬場の傾向、ラップの分析に定評がある。毎週、目黒貴子さんとその週の重賞解説の動画も公開中。

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