17年12月9日に落馬負傷した吉田豊。騎手生命を危ぶまれるほどの大ケガをしながらも、数度の手術と懸命のリハビリを経て今年の3月2日にターフに戻ってきた。
それから徐々に鞍数を増やしながら、レース勘を取り戻していった。ついに4月14日、中山8R袖ケ浦特別をハーグリーブスで差し切り。待望の勝利を挙げている。
事故から実に1年4カ月ぶり。苦難を極めた復帰はこの一瞬のためにあったに違いない。
その道のりを支えたのはデビュー間もない時代に自信と実績を与えてくれたメジロドーベル(96~99年にGⅠ5勝の名牝)の仔、ピンシェルの存在が大きかったという。
「ここにきて成長している」
――青葉賞に出走するピンシェルには復帰前の調教からまたがっていたとか。
吉田豊騎手「ええ。ドーベルの仔でもあるし、(高橋文)先生も気を使ってくれて。それにもともとレースで乗る予定もあったんですよ。自分の復帰の時期が予定よりもズレ込んでしまったので、今回が初騎乗ということになったんです」
――初めて乗った時の印象はどうでしたか。
「首の使い方がドーベルと似てるなと思いましたね。ただ、最初はまだ体を持て余している感じでした。気性も。速いところへ行くと掛かったと思ったら、フッと気を抜いてみたり。ドーベルはそのあたりは最初からしっかりして、バランスも取れていましたから」
――今週の追い切りの動きはどうでしたか。
「オープン馬のニットウスバルを大きく追い掛けて最後は併入。坂路2本目でしたが、最後まで力力強い脚取りで真っすぐ駆け上がれました。だいぶしっかりしてきましたね。兄のホウオウドリームもそうだったんですが、晩成は晩成だとは思っているんです。でも、自分が考えていたよりも早く勝ち上がれたんですよ。ここにきて成長してるんでしょうね」
――ダービーへの権利取りがかかります。
「脚を長く使いそうなので、距離や広いコースは合っていそう。相手が一気に強くなるので、どこまでやれるかというのが正直なところですが、ドーベルのラストクロップでダービーへ行けたらこんなうれしいことはないですよね。ピンシェルに乗りたいから、自分も早く競馬に復帰したいとも思っていたんです。なので、何とかいいところを見せたいですね」