春のGⅠシリーズ初戦は、モズスーパーフレア騎乗のユタカ(武豊)さんがカギやな。
先手を取りたいと思っている騎手も、ユタカさんが「自分のスタイルはハッキリしている。迷いはない」と逃げ宣言していれば、無理にハナには立てんだろ。他の馬がハナに立つとすれば、ユタカさんが出遅れたときだろうな。でも、それはスタートしてみないと分からない。
ユタカさんがハナを主張したとして、勝負どころを考えてみよう。
今の中京は、俺がこのレースを3度(1999年マサラッキ、2002年ショウナンカンプ、09年ローレルゲレイロ)勝った頃のような平坦じゃない。長い直線(約410メートル)を向くと急勾配の坂があるし、坂を上り切ってもゴールまでは200メートル以上残っている。やすやすと逃げ切れるコースじゃないけど、ユタカさんの馬はそういう脚質だから、逃げる競馬しかできない。
重要なのは前半のペースや。競馬は「前半600メートル(3ハロン)、 後半600メートル」のペース配分が大事で、1200メートルはまさに600、600や。ユタカさんの馬が前半を33秒台で飛ばして、後半33秒台で上がれるのか。そこをどう読むか。上がりが34秒台後半なら、絶対に差されると思うね。いかに前半を楽にスローで逃げることができるかだな。
おそらくユタカさんとしては、後ろの馬が見えるか、見えないかぐらいのところで理想的なスローに持っていきたいはず。そういう展開になれば、最後までもつんじゃないか。それしか勝機はないと思うね。
モズの番手につけるのはナックビーナスかな。この馬は好位からでも競馬ができるから、ユタカさんを楽に逃がすのか、ある程度くっついてマークするのかがひとつのポイント。俺はナックビーナスの方が、潜在能力は上だとみているが、ユタカさんの馬を意識し過ぎると、「共倒れ」も考えられる。ナックが2番手につけるなら、3番手以下の馬たちが絡んできたところで動かないと、最後までもたないよ。
ユタカさんが主導権を握り、イメージ通りのレースをするには内枠がよかっただろうね。
ユタカさんの逃げ宣言をうがって見れば、不安の表れとも読み取れるわな。「ハナに行く」と宣言した時点で、他の馬を威嚇してることになるからね。自分の競馬に持ち込むために伏線を張っているとも言えるんじゃないか。競馬は馬場以外の駆け引きもあるからな。
■編集部の見解
ナックビーナスは2戦連続でモズスーパーフレアの②着。前走のオーシャンSは、モズが前半3F32秒3の超Hラップ。ナックの鞍上大野には、2走前の記憶もあったのだろう。斤量が軽くなったのに、モズを深追いしていない。
それでも着差を縮められず、上がり3Fは数字を下げた。藤田の見解を踏まえると、ここも好位づけか。
3年前の高速時計は例外で、高松宮記念は例年、良馬場で1分8秒台。前半3Fが33秒台なら、上がりはせいぜい34秒台後半、35秒台もある。モズは潰れる。狙いは差し馬、ミスターメロディの巻き返しだ。
鞍上の福永は前走の阪急杯で「内の馬にぶつけられた」と怒り心頭だったが、レースの制裁は福永だった。
内をすくおうとしたタイムトリップの余波で、トモを滑らせて外側に斜行し、リョーノテソーロの進路を塞いだことが対象だ。4角まではスムーズなレース運びだっただけに、1F短縮で汚名返上のレースだろう。